梯久美子「戦争ミュージアム」(岩波新書) ノーベル文学賞ハン・ガンの話

2024年7月初版
日本にある戦争関係の博物館や美術館、記念館14か所を訪れたノンフィクション。一読をお勧めしたい本。筆者は梯(かけはし)と読む。
以下のミュージアムで、その訪問記をいずれも十数ページの文章で、訪問の印象が簡潔に述べられている。

大久野島毒ガス資料館(広島)      予科練平和祈念館(茨城)
戦没画学生異例美術館(長野県)    周南市回天記念館(山口県)
対馬丸記念館(沖縄那覇)  象山地下壕(松代大本営地下壕)(長野)
東京大空襲・戦災資料センター     八重山平和祈念館(沖縄石垣)
原爆の図丸木美術館(埼玉)      長崎原爆資料館
稚内樺太記念館    満蒙開拓平和祈念館(長野県)
舞鶴引揚記念館(京都舞鶴)  都立第五福竜丸展示館(東京夢の島)

。自分は情けないことにどれも訪問したことがない。残り少ない人生ながらこのうち幾つかは訪れないといけないと読みながら思った。

予科練は特攻隊の基地であったところ。回天は海軍の人間魚雷である。死んでいく若者たちの声が聞こえてきて、胸を打たれた。沖縄から学童疎開をしていた対馬丸が米軍の潜水艦によって撃沈させられた事件、樺太からの引揚者の話、満蒙開拓団の悲劇、簡にして要を得た紹介で淡々とした文章で綴られている。戦争とは、死と別れと憎しみと愛の話なのだということがわかる。

終戦の時19歳だった詩人茨木のり子の国家への怒りを紹介している。

樫の木の若者を荒野に眠らせ
しなやかなアキレス腱を海底につなぎ
おびただしい死の宝石をついやして
ついに
永遠の一片をも掠めえなかった民族よ





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2024年度のノーベル文学賞が韓国の女性作家ハン・ガンに決まったというニュース。
まだ50代の若い作家で、少しびっくり。ただ、世界的な文学賞であるブッカー賞をとった作家なので、受賞は不思議ではない。日本人だと小川洋子もその一人。

二年前にこの作家の小説を、このブログにとりあげていたので、あわせて紹介する

読みやすい作家とはいえないが力量は十分、まずはアジア人女性で初めてということで慶賀の至り。

 

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