敗北するアメリカ エマニュエル・トッドの予言(朝日新聞2/26より)


フランスの人類学者、歴史学者のエマニュエル・トッドのインタビューが2025/2/26の朝日朝刊に載っていた。トッドは、1月のクーリエジャポンで「トランプの仕事はロシアに負けた米国の敗戦処理」という予言をしている。ロシアに負けたアメリカ、について今回のインタビューは詳しく述べている。なかなか面白い話。この記事は有料記事なのでネットでは最初しか読めない。朝日購読者以外の方に、少し要約をしてみる。

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・我々は世界史の転換点にいる。米国はロシアに対し屈辱的な敗北を経験しつつある。

・世論操作と心理作戦でまだ一般の人々にはわかっていないが、事実上の敗者は米国だ。

・事実上ロシアとアメリカの戦争だったから、ウクライナも欧州も蚊帳の外なのは当然。

・米国主導の経済制裁が失敗し、ロシアは持ちこたえ、欧州は天然ガス供給カットなどで傷ついた。

・2023年の「反転攻勢」も失敗した。

・米国が抜けても欧州が支援を続ける可能性はあるが、米国が敗者であることは変わらず。

・米国の産業システムがウクライナに十分な武器を供給できなくなっている。

・日独と違ってアメリカはエンジニアになる若者が少ない。ロシアより低い。

・自分は、乳幼児の死亡率について、その高さゆえ、かつてのソ連が崩壊する予測を立てたが、今2000年から急速に改善し、2020年にはロシアより米国のほうが高くなってしまった。(日本は依然として世界一低い)

・トランプを支持する宗派は保守派のキリスト教福音派である。この人たちはプロテスタンティズムの基本、神に選ばれることを心配し信じられないほどの道徳的規律を守ってきた人たちだが、その精神は今の米国にはない。むしろ宗教ゼロの社会になっている。トランプの行動はプロテスタンティズムとは正反対。退廃的なデカダンスである。イーロン・マスクも同じだ。

・自分は保護主義そのものには反対しない。ときに国にとって健全な産業育成に必要なこともある。しかしトランプの保護主義政策は成功しない。

・なぜなら保護主義政策をとって関税を上げて、外国製品の輸入を難しくすると、国内でその製品を作る必要がある。しかし米国では国内産業はもう再建は無理だろう。技術者や熟練労働者がいなくなっているから。

・今米国が繁栄しているのはドルが基軸通貨で強いから。物を作るのはその強いドルで外国から買えばいいから。国内の優秀な若者は製造業を選ばない。

・今後のアメリカは、ロシアとの屈辱的敗戦となる一方で、弱いパートナー国にたいして、いじめのような態度にでることが予想される。自分はこれまでは日本はもっと世界で主体的に責任を果たすべきだと言ってきたが、いまは、日本は静かに目だないようにしたほうがいい。

・米国と欧州や中国との関係は激化するかもしれないが、いまは対立には関与しないほうがいい。自国の生産システムを守ること。

・日本は地政学的な対立に積極的には関わらず、米国が衰退していく世界を慎重に見守ることが大切。

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以上がトッドの予言的なもの。今後どうなるか、ガザとウクライナの人たちの正義と人権と命が守られることを祈りつつ、日本が今後どのようにトランプのアメリカとつきあうのかしばし時間をかけて様子を見る必要があると思った次第。


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