津村記久子「この世にたやすい仕事はない」日経新聞出版社

津村記久子は、「ポストスライムの舟」に次いで二冊目。ポストスライムでは芥川賞、この作品は2015年の出版で、もとは日経新聞の連載小説。芸術祭新人賞をとっている。

 津村は今のところ、働く女性を主人公にした小説が多いのだが、ただの仕事人小説とは一味も二味も違う肌さわりがあって、なかかな面白い作家のひとりだと思う。

 「この世にたやすい仕事はない」は職場の人間関係が原因で仕事をやめた女性が、ハローワークの紹介で次々と新しい仕事を体験していくお話。全部で五つ。「みはりのしごと」「バスのアナウンスのしごと」「おかきの袋のしごと」「路地を訪ねるしごと」「大きな森の小屋での簡単なしごと」どれもありそうで、なさそうなかなりニッチな仕事を紹介され、どれもそつなくこなしていくのだが、何かどこかで続かない事情が起きてくる。
淡々としていて、少しホラーだったり、サスペンスだったり、アクション風のものもあって、主人公の性格のせいか、あまり重くないのが後味よし。読んでけっこいう楽しめる小説だと思う。
 津村のことを知ったのは辛島デイビッドの「文芸ピープル」でとりあげられていたから。この本は、翻訳者の辛島が、アメリカで関心をもたれている日本の若い女性作家を紹介しており、津村もその一人だった。

もう一冊「サキの忘れ物」も借りていて、こちらはもっと短い短編集のようだが、こちらも楽しみ。

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