今年のベスト本か…「書くこと、生きること」梯久美子(毎日新聞出版)

梯久美子さんの新作。というか、若干古いものも含めて、これまで書いてきたエッセイをまとめたもの。2026年7月28日初版。
とてもいい本。多分今年これまで読んだ本でベストだと思う。太平洋戦争を扱ったノンフィクションを書く人という印象だが、この本では、小説家、詩人、写真家など、主に女性の作品とその生涯をとりあげて、短いエッセイを綴っている。どの一つも興味深く、ああ、この人のこの本を読まなくては、この写真集を見なくてはと思ってしまう。見事なブックガイドであり、戦中戦後を生き抜いた女性たちの目から見た現代史でもあった。       
            

以下の構成になっているので、章ごとに短い感想を。
【第一章】女がものを書くということ──抗う言葉、記憶の声
           島尾ミホ/森崎和江/石牟礼道子/中城ふみ子/吉野せい
*森崎と吉野せい(「洟をたらした神」作者)は未読だった。ぜひ読まなくては。中条ふみ子という若き歌人と当時「短歌」編集長だった中井英夫(「虚無への供物」作者)の強い絆について、初めて知った。こんなことあったんだなあ。

【第二章】書かずには終われない──当事者たちの戦争
           吉沢久子/愛新覚羅浩/半藤一利
 *愛新覚羅浩は、侯爵嵯峨家の長女浩で、ラストエンペラー愛新覚羅溥儀の弟溥傑の妻。「流転の王妃」と呼ばれる。満州国崩壊後、苦労して日本に渡り、実にドラマティックな人生を生きた人。この人の日記の紹介なのだが、短くてもなんと濃い!

  【第三章】「ひと」を追いかけて──私が出会った表現者たち
     石垣りん/茨木のり子/谷川俊太郎/石内都/石川真生/比嘉豊光/古屋誠一
*石垣りんも、茨木のり子もこれまでこのブログでとりあげてきて、自分の最も好きな現代詩人のベスト2なのだが、梯さんも同じ趣味みたい。同慶の至り。ところで、石内都さんを知っている人はどれくらいいるか。世界的な写真家なのだが。自分はこの本を読むまで全く知らなかった。そして、読み終えた今、なんとしてもこの人の「ひろしま」と「 Mother's」を見なくてはならないという思いを強くした。

【第四章】生きて、書き続ける──ノンフィクションとはなにか
     沢木耕太郎/山本作兵衛/角田房子/岩川隆/石原吉郎/宮柊二/河合香織
*沢木耕太郎の個所がよかった。特に「流星ひとつ」における藤圭子のインタビューはなんとも凄いものだった。ただの演歌歌手じゃない。ほんとに、ただものじゃない感。宇多田ヒカルはこのインタビューを読んだんだろうか。

とても読みやすい本で、優れたブックガイドにもなっているので、読書好きな方、ぜひご一読を。後悔しないと思います。

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