2019年の芥川賞受賞で、素晴らしい小説。20歳過ぎのプロテストに受かったばかりの若いボクサーの話。一人称小説で、寡黙な若いボクサーと、同じ選手でありながら年上でトレーナー役をかってでてくれたウメキチとの切磋琢磨が、スポ根ものとはかけはなれた乾いたつながりの中で、クールに、ハードボイルドに、一瞬燃え上がったり、けだるさの中でまどろんだり。
思考が次々と言葉になり、考えていないことが言葉として表出したり、本人の思いもよらず素直な言葉がでたり、それに驚いたり。飛躍があっても、少しも不自然じゃない、ちゃんとついていける文体は、なかなかのもの。それは手練というよりも、若さがもたらすスピード感と爽快感ゆえじゃないかな。
もうこれで最後になるかもしれない試合が近づいてくる。ウメキチの考えてくれた独自のそして辛いトレーニングとこれまた過酷で計算の行き届いた減量方針で、心と体の限界まで近づいた「ぼく」が、たどりついた境地とは。試合がどんどん近づいてきて、ページもどんどん終わりに近づく。もしかしたらこんなエンディングかなとふと思ったら…
150ページに満たない小説なので、ぜひ読んでみては。これもお勧めの作品です。
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以下は芥川賞選考委員の評:
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