伊良部総合病院の精神科の医師、伊良部一郎。まずもって奇人でとんでもなお医者さんである。その病院に、サーカス団員の男がやってきて、空中ブランコが飛べなくなったと訴える。お医者さんは、とりあえず太~い注射を一本して、終わり。それどころか団員に自分もサーカスに出させろ、空中ブランコを飛ばせてくれと、無茶苦茶な要求。団員のイップスは良くならず、逆に医者は毎日のようにサーカスの練習に参加して、とスラップスティック風のコメディになる。
5編の短編集で、どの作品も特殊な仕事をする主人公がいて、伊良部がその担当医になってかかわってくるという形式。飛べない空中ブランコ乗り、先端恐怖症になったヤクザ、強迫神経症のかつての同僚の神経科医、一塁に投げられなくなったプロ野球のサード、不安神経症の女性作家。どれも癖の強い人たちが、さらに圧巻の変人医師伊良部との出会いで、呆れ、馬鹿にし、でも頼らざるを得ず、ついには心癒されていくストーリー。全編がドタバタコメディでありながら、どこか心を病む人たちに、優しい手を差し伸べている。なかなか素敵な読後感の本だった。
2004年の直木賞作品。以下に選評を添付。
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