初めて読んだミルハウザー。なかなかの幻想小説の書き手でした。この本は、9つの短編が収められていて、タイトルの「高校のカフカ、一九五九」が一番長くて他の三倍くらいの中編。後ろから二番目におかれているので、とりあえず他の短編を読み始めたら…
「斬首刑(ざんしゅけい)のあとで」にまずびっくり。アメリカのある街で急に刑罰の一つとして斬首=ギロチンが取り入れられ、公開処刑の形で市民の目にふれることに。これが人々の日常を少しづつ変えていくことになる。こどもたちがギロチンのおもちゃを作り、少年たちがギロチンパーティをし、大人も手作りの断頭台を作ったり。しかし町は平和に維持されていく、ギロチンがある前も今も変わらずに、という物語。なんというか、異物が現れ人々が右往左往しやがてそれが日常になり、という、こういう感じの短編が多い。「梯子たちの夏」は、ジャックと豆の木みたいに、町の人たちが「梯子」という観念にとりつかれ、みなが梯子を作り上に上にと登っていく話。不気味な異世界です。
「高校のカフカ、一九五九」は、高校生のカフカという少年の生活が断片的に描かれる。数ページごとの小見出しがついて、「英語の授業のカフカ」、「居間のカフカ」、「カフカ、卓球をする」、「カフカ、笑う」などなど、カフカの生活の描写もあれば、カフカの意識の流れを追うだけの章もある。アメリカの20世紀半ばの田舎の若者の日常と、日常に齟齬を感じる若者の感情、それが描かれていて、あの文学者「カフカ」という記号が、読み手の心理の裏に常に現れては消えていく、そんな感じ。まあ、カフカを読んだことがない人はわからないだろうが。しかし、カフカより、なんというか、サリンジャーをちょっと思い出させるんだが、それは私の勘違いだろうか。
面白かった。この人の作品、多分図書館にはないだろうが、探して読んでみたい。
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