「つまらない住宅地のすべての家」津村記久子(双葉社)

津村さん、2023年に「水車小屋のネネ」で谷崎賞をとったのは記憶に新しい。今日は2021年の長編「つまらない住宅地のすべての家」を読む。それにしても、津村さんのタイトルは何とも飾らないというか色気がないというか、たとえば「まともな家の子どもはいない」とか「この世にたやすい仕事はない」とか「アレグリアとは仕事ができない」とか、「~ない」シリーズか、と言いたいほど。閑話休題。

本書は、構成的にはなかなかユニーク。タイトルのつまらない住宅地の地図がまず見開きにあって、そこに10軒の家が書き込まれ、下に簡易的に家族構成が書かれている。これが小説全体の見取り図になっている。最初の100数十ページは、このそれぞれの家族の紹介。そして隣近所とのまあ「うわべ」的な関係が描かれる。そして事件が起こる。
横領の罪で服役中の女性が刑務所から脱走し、この地区にやってくるという情報が流れる。そこで地区の自治会長さんが、交代で見張りをしようと提案する。これまでまるで付き合いのなかった家同士が、お互いの事情はあるものの何らかの形で、地区の仕事としてこの見張りに参加するようになり、それぞれの家庭の関係性も少しずつ変わっていく。
小説の後半は、この脱獄囚が、なぜこの地区にやってくるのかが、明らかになっていき、その女性と地区のある家の関係も明らかになっていく。

ほんのりサスペンス調でもあり、ユーモラスなところもあり、基本はとてもヒューマンな物語。悪人風の人たちもいるのだが、でも最後にはみんなちゃんと救われていて、これは津村さんの小説の多くでみられるパターン。あまり激しくはないのです。
まずまず面白いのだが、登場人物が多すぎて、何度も何度も表の見取り図を振り返りながらの読書となった。ちょっと変わった読書体験。


 

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