「資本主義を半分捨てる」青木真兵(ちくまプリマー新書)

2026/2/10初版。青木さんは奈良県東吉野村で、自宅の一部を開放し「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」として、研究書、専門書から絵本まで人文知と思われる蔵書を閲覧、貸し出しなどを行っている方。もとは研究者だったが、奥様の病気を期に移り住んだという。
青木さんの思想の根底には、イヴァン・イリイチの考え方がそのまま流れているようだ。イリイチはオーストリアの哲学者、評論家で、もっとも有名なのが1971年に書かれた「脱学校の社会」。学校という制度が人間性を奪っているとして、学校に依存しない生き方を説いた。「脱病院化社会」では、人間の健康が病院・医療体制によって管理され、過剰医療による「医源病」まで生むようになっていて、人間性が損なわれているという見方をする。
つまりある種の固定的な制度から飛び出して、自分自身が本来もっている関心、価値観をもとに生きてみようという思想のようだ。
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青木さんは、田舎暮らしをし、自然な農法をしたり、人々との付き合いを大事にしたり、
「市場的価値観」を離れて、自分で考え、自分で評価し、行動する人間でありたいと思う。ただし、一方的に自己ニーズだけで生きていくこともできないわけで、自己ニーズと他者ニーズと二つの世界を行き来しながらが、ちょうどいいという、穏やかな考え方。
田舎に住み、土地に根付き、「持ちつ持たれつ」の社会に身を置くことは、一律の価値観、労働=貨幣という考え方と少し離れて生きることで、それが人間性のトータルな回復につながるのではという指摘なのだと思う。私設図書館は「有縁の場」であり、「コモン」(共有の場)なのだという主張。

青木さんは、健康を害した折、内田樹から合気道を学び、心身の健康を取り戻したという。内田スクールの一人である。二人の考え方、感性はとても近い。面白く読んだ。ただし、この本の本として評価は今一つ。章立てが今一つ明快でなく、冗長になるところ、繰り返しになるところがあった。あと「資本主義を半分捨てる」というタイトルと、なんというのかなかなか近づかなくてもどかしい感じが残るのであった…

 

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