柚月麻子「ついでにジェントルメン」(文藝春秋)

このタイトル、どういう意味だろう。なぜか、その下に英語のタイトルもついていて、そちらは"Tired of taking a backseat to gentlemen"とある。直訳すれば、「男をたてるのはもううんざり」くらいの意味。これが、「ついでに」にどうやって化けるのか、などと考えても、この本とは何の関係もないのでした。
「ナイルパーチの女子会」が面白かったので、柚月さんの本で新しいほうのものを2冊借りてきた。まずはジェントルメンから。ちなみにバターはしばらく借りれそうにない。
Come Come Kan!
渚ホテルで会いましょう
勇者タケルと魔法の国のプリンセス
エルゴと不倫鮨
立っているものは舅でも使え
あしみじおじさん
アパート一階はカフェー
という7つの短編が入っていて、まあどれもなかなか奇想天外でユーモラスで、ちょっと不気味。ナイルパーチでも十分に暴れていた柚月さん、まあこちらはあのような「怖い」ところは、短編のおかげというのもあるが、その一歩手前までで止まっているので、心配はない。
「Come Come Kan!」は、文藝春秋社に出入りする新人作家が、会社の設立者の菊池寛と出会うお話。今の時代に菊池寛がいたら、というファンタジーです。でておいで菊池寛ちゃん、というニュアンスか。
他の作品もどれもまずまず読ませる。タケルはゲームの話なので、ちょっと感覚がわからない。「あしみじおじさん」は小公女セーラ、若草物語、赤毛のアン、あしながおじさん、などなどかつての欧米の少女小説を大人になって読みふけったあげく、その分析から、人生で女が成功する秘策を考えるみたいなおバカなおなはし。笑えます。

一番面白かったのは「アパート一階はカフェー」。これは実際に昭和初期に初めてできた女性専用のアパートをめぐるお話。こちらでも菊池寛が活躍する。このアパート、なかなか先進的な造りで、かなり面白いデザイン。その一階にカフェーを作った女性たちの苦労話で、菊池寛が出資してくたとか。主人公はそのカフェーの女性オーナーだが、いろいろな女性が関わってくるストーリー。アパートの住人のひとり、とみ子さんはこのカフェー常連だが、なんと谷崎潤一郎と恋をして二番目の妻になった人(1番目と3番目は有名だが、2番目というのがみそね)。実話風の創作なんだろうが、実際、このアパートに関する書籍も巻末に参考文献としてあげられている。ユーモアにあふれる軽い短編集で、時々ふきだしてしまった。


 

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