一穂ミチ「光のとこにいてね」(文藝春秋)

2022年11月初版、23年直木賞最終候補作品。女性同士の友情とも恋ともつかず、「魂の双生児」風の物語というか。一気に読ませる筆力はさすが。
 父が医者の裕福な家の小二の少女、結珠(ゆず)と、貧しい団地で母親と二人で暮らしている同じ年の少女、果遠(かのん)が出会う。ゆずは母とうまくいかず、かのんは学校で仲間外れにされ親からは虐待気味の扱いを受けている。週に一度、母とともに訪れる団地での短い時間に二人は友情を深める。かのんにとって、ゆずは先生のようにいろいろと教えてくれる存在であり、ゆずにとって、かのんは唯一心を開ける友達になった。そしてふいに二人の関係が終わる。母が団地を訪れることをやめ、ゆずはかのんに会う方策を失ってしまった…運命の二人はその後どのように再開するのか、それぞれの不幸に二人はどのように立ち向かっていくのか。二人の友情は変わらないのか、それは愛に近いものなのか…
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ストーリーは、ゆずとかのんと二つの視点で交互に書かれている。同じ場面にいた二人がそれぞれ何を感じ考えているのか、二人の違いと共通点がわかるような描き方で、特にこども時代は家庭が真逆なので、その落差とともに二人の生き方がよくわかった。最終的に大人になり29歳の時に再会(2度目)するのだが、ずっと二視点で書かれており、親からも離れてしまうと、二人の相違点より共通点が前にでて、ストーリーの深みを失った感じがある。読み手が、今はどっちの視点だっけと思うようなところも少しあって、そこが小さな瑕疵かな。三章が長すぎるのもちょっとバランスが悪い感じ。

もう一つ、出てくる男性たちが、父を除いてみないい人すぎて、というか二人にとって「都合がいいい?」ようなキャラクターになっていて、二人に立ちはだからないのが、どうなんだと、これは男性視点から思うのだが。ものわかりのいい男ばかりではない。
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以下ネタバレあり。これから読む人はここまで。



最後に。水人の決断は、どうしても男としては納得いかないかな。また、瀬々と別れるというかのんの気持ちもちょっとわからない。そして、家族を捨ててゆずと一緒に暮らすというのならまだわかなくもないのだが、一人で生きていくという決意が、理解できない。どんな言い訳をしても、瀬々を捨てることは、新たな不幸の子をうむことになると思うのだが。
そして最後の二ページ、これはなしにして、二人の今後、四度目の再会があるのかどうか期待を残して、ぼんやり終わらせた方がよかった感じ。

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