久しぶりに村田紗耶香。いずれも面白く二日で二冊読んでしまった。
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』は2020年初版で、中編が4作。
表題作品の「丸の内魔法少女ミラクリーナ」は、大人になっても魔法少女のままで、コンパクトを使って変身し、社会の正義のために戦う、のではなく、ごみ拾いや人助けをする丸の内OLの話。幼馴染の女性と同棲する男にも、この魔法的な暗示がかかってしまい、男は彼女以上に活躍するのだが、やがて…。笑いと狂気と恐怖が混ざった感じだけど、全体はユーモラスな印象。
「秘密の花園」では、初恋の男をなぜか監禁してしまう女の話。奥手と思われた女の子の、ある種すさまじい執着が描かれるのだが、やはりどうしても、男が簡単に監禁されてしまうのが不自然。そして男の復讐がないのも。
「無性教室」は18歳まで性別を禁止されているという世界の話。そこには恋もあるのだが、主題はユニセックスなのかな。
「変容」の世界はもっと異常で、男女がセックスをしなくなるし、怒りという感情を喪失していく話。自己啓発セミナーのようなものに、洗脳されていく過程が怖い。
村田作品の狂気と諧謔の世界はここでも順調に広がっているのだが、短編か中編というせいか、ややあっさり目です。読みやすい。
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『消滅世界』は2015年初版で少し古いが、先月11月28日、村田作品では初めて映画化され公開された。蒔田彩珠主演。
一種のSF小説で、パラレルワールドぽい設定になっている。愛し合う男女が結婚し、セックスし子どもが生まれ、家族が誕生する、という一般的な社会の在り方に対して、別の世界観を提示しているもの。夫婦は交尾せず恋人は別に作る。しかし恋人とセックスをすることはない。セックスそのものが忌避されるようになった世界。一緒にいて心地よく心安らぐ関係である二人がやがて、実験都市に移住し、そこで人口受精をし、なんと夫も人口子宮を装着され子供を産むという世界に入り込んでしまう。そこには夫婦も家族ももはやなくなり、受精は人類維持のためだけで、人は一人で孤独を感じずに生きている。一気に読ませるのだが、250pずっと性と愛と家族と子供のことを読み続けるのは、なんか少し辛くて「飽きて」くる。常軌を逸したような設定など、村田紗耶香らしさはあるのだが、狂気が結構まじめに描かれているので、少し重い印象。村田はあえてその世界の支配者層について触れてはいないのだが、それはどんな思想を持った人たちだろうか。もしかしてAI的な?とふと思ったり。
この次の作品が芥川賞をとった「コンビニ人間」。もう9年前で、あれはちょっとした衝撃だった。さて、次は「世界99」読みたいが、図書館では貸し出しが続き、書棚で見たことがない。
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