こちらも図書館で借りた少し古い本。三浦しをんの作品は結構読んでいて概ね好みです。良質のエンタメで読後感がいいのがほとんど。ギャグ的なユーモアがそこかしこにあって、でもこれは少し好みがわかれるところかも。
主人公の一人がかんざし職人で、作っているのは「つまみかんざし」。こんな感じの物。
東京神田か浅草あたり、まだ小舟が交通手段になっている貴重な区域があって、少し昭和の雰囲気。政(まさ)と源(ゲン)という二人の老人73歳の友情物語というか。政は元銀行員、退職しこれからというところで妻が家をでて娘のところに行ってしまう。一人暮らしを余儀なくされている寂しい身の上。近くに住む源はつまみ簪(かんざし)職人。いわゆる「頑固一徹」そのままで、40歳で妻と死別し、つい最近20歳の弟子をとっている。弟子の年上の彼女との結婚話、政の妻との復縁の話など、どたばた風にすすんでいくのだが、いかんせん、主人公が73歳のふたりなので、湿布とか頻尿とか、話題がまことに年より臭いのである。読んでる方もまあ同年配だから身につまされるかもw
いい話で、しんみりもするし、こんな暮らしもいいなあとあこがれも少し。何より、「職人気質」を描かせたらやはり三浦しをん、手練れな感じ。簪のことを全く知らない自分でもその細工の妙に魅せられてしまうのであった。
250ページほどで、けっこうさっと読める物語。嫌な奴はでてこない。安心できる本です。
コメント
コメントを投稿