2024年の本屋大賞受賞作品。この本、自分の好みとは違うかなと手に取らなかったのだが、本屋さんを歩いているうちに、この帯に150万部と会って目に留まる。帯の裏には、三浦しをんや辻村美月の推薦が載っていたり。図書館だと順番待ちだろうなと思い、文庫化したこともあるので、珍しく購入してみた。
6つの短編からなっていて、おおむね「成瀬」という女学生と、その友人たち、とくに親友の「島崎」との友情物語、成長物語といえる。短編集のうち二つは、周囲の男性視点で書かれる成瀬の姿。特にかるた全国大会に出ている成瀬の姿に一目ぼれする男子とのやりとりはなかなか秀逸。
面白いのだが、ちょっと極論すれば、「少女マンガ」の面白さ。スーパーで、浮世離れして、誠実で、エキセントリックなヒロインを設定して、それを動かしていく形。マンガにすれば結構爽快な、そしてしんみりとしたペーソスもあるいい話だと思う。
何が足りないんだろう、自分が惹かれ圧倒される女性の作家たちの小説と決定的に違うのは何なんだろうかと考える。ちょうど三浦しをんが推薦文を書いていて、三浦の作品を思い浮かべるのだが、ユーモアもあってドタバタもあってしんみりもして、でも三浦の作品には爽快感があって、小説としての完結性があって、成瀬の話には、それがない。とりちらかって、何が核かわからない。成瀬は時にAIかとさえ感じたり。
いい点は、テンポの良さ、成瀬というキャラの面白さ、くどくない程度の現代の高校生の生活と精神性などがわかること。話はどんどん進んでいく。どんどん読める良質の少女マンガのように。
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