「とんこつQ&A」今村夏子(講談社)

今村夏子、寡作で、出す作品はどれも賞をとるという稀有で風変わりな作家です。これは2023年の短編集だが、それ以後は書いていないので、これが一応最新作ということになるか。
街の中華やさんに勤めることになった中年女性。コミュ障害気味で、接客がうまくできない。そこでQ&A形式で想定問答集を作って、メモを見ながらしゃべるとうまくいく。店の主人とその息子を巻き込みながら、なんとか普通の接客ができるようになり平穏なバイト生活と思ったら、もう一人バイト女性がやってきて、これが主人公に輪をかけたようなヘンテコな女性…。ちょっと変だけどまあ許容範囲と思われていたありふれた日常が、少しずつずれて、異空間にすべりこんでいく、これぞ今村ワールドという作品です。今回はドタバタ風味やコメディ風味もあって、途中声をだして笑った場面も。

他に3篇入っていて、どれもこれもweired(奇妙)でquirky(へんてこりん)で「不気味」で「キモイ」世界。いわゆる大作を書く作家じゃないし、up to dateな作風はないんだけど、「世間の怖さ」みたいなもの書かせたら第一人者というふうになっちゃったかも。

 

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