「死に方がわからない」門賀美央子(双葉社)


フリーランスの物書き、門賀美央子(もんがみおこ)さんの、ちょっとかわった「終活」の本。出版された2022年時点で50歳になったばかりで、いわゆる終活にはちょっと早いのだけれど、独身で母とは離れて暮らし、兄弟もなく近い親類もいない。フリーランスで編集者とも距離は近くない状態。近づいてくる最後に向けて、どのような準備が必要かを自分で調べ、歩き、見て、話してと結構精力的に終活に取り組んだ記録である。この年でどうしてと思うのだが、「大過なく寿命を迎え、きれいサッパリ死んでいく」方法が皆目わからず困ってるのだ。と自己紹介。いい死に方探しを同じ独身の「おひとり様同士」共有しようではないか、という趣旨の本。ユーモアというか、ちょっと平成ののりのギャグもいっぱい交え、自分の体験を笑いを交えたエッセイで綴る。読みやすくて、資料的は網羅されていて、結構深い。マニュアル本じゃなくて、あくまで終活エッセイ集とぃう味わいで楽しんで読める本だ。
何度も触れられるのが、孤立死して腐乱状態で発見されるのは最悪で、それをどうやって防ぐかというあたりから始まる。普通に見守りサービスなんだろうが、安くて、人に迷惑かけなくてとなるとLINEを使った友達間のものや、有料の簡易的なサービスなども紹介され、まずは一安心。

さらに病院にかかる場合の、医療ソーシャルワーカーのことや、リビング・ウィル、緊急医療情報のこと。自分が死んだあとのことは、葬儀の仕方(してもらいかた)、遺骨の処理、遺品、口座の相続先などにも目を配る。極力お金をかねないにしても、一定の額は必要でさらに働けなくなってから死ぬまでの間をどうやって生きるか、も重要課題。筆者は最後にファイナンシャルプランナーとのオンラインでの面談に挑む。予想外のお返事をもらって、なぜか妄想は遠く「ロス疑惑」までさかのぼったりして、最後までサービス精神に富んだエッセイで、なるほどなるほどと読める本だった。

このテーマの本はいろいろ出てるだろうが、これはまず読んでおくといい話ばかり。難しいところは飛ばし読みでいいし、自分に関係のない話は読まなくても大丈夫。

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ところで、献体という制度をご存じだろうか。亡くなったあと、生前意思表示に基づき、大学病院などの解剖実習用として、自分の遺体を使ってもらうという制度である。死亡したその日に大学病院から移送の車が来て、遺体を運び出す。一年後に火葬したことが連絡され、希望がなければ大学でその遺骨も埋葬してもらえるという制度(細かいところちょっと違うかも)。これだと葬儀費用一切かからない。これまではそれを希望する人は少なかったのだが、今はかなり増えてきて、地区によっては献体が余って希望しても断られることがあるとか。貧困のせいで、やむに已まれずこれを選ぶ人が増えているのかもしれない。

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