「流」東山彰良(講談社)

2015年の直木賞受賞作品。これも一気呵成に読ませる面白本。

舞台は台湾、1975年頃のお話。主人公は17歳くらいの設定で、台湾の貧しい地区に大家族で暮らす若者が、熱しやすい家族、悪友との腐れ縁、貧困、すさまじい喧嘩、幼馴染との恋、不良のたむろする学校、士官学校を脱走しついにはとらえられぶち込まれた軍隊体験、そして殺人事件の被害者になった祖父の死の謎をめぐって、大きく揺れ動きながら、成長していく話。祖父の死の謎を追う部分は濃密なミステリー風になっているが、ぜんたいとしては、血と汗と涙の青春小説といっていい。一人称の文体が、ときには「つっぱり」「気取り」「高揚感」「露悪趣味」「自己嫌悪」「正義感」という若い命を小説全体にぶちまけながら、すごい勢いで突っ走っていく様は、小説のエネルギーとはこういうものなのかと思わせるほど。文体の力を感じさせた。よい小説。

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