島田雅彦「パンとサーカス」講談社

面白かった。かなりの長編だが、一気呵成に読ませる筆力はさすが。
スパイものの冒険活劇という感じでしょうか、長いけどスピード感があって、どんでん返しも結構ある。「ミッション・インポッシブル」風というか、あの感じで読める。現代日本の政治状況を扱っている。日米安保協定の中で、日本は否応なくアメリカに隷従的態度をとらざるを得ない状況が、詳述される。

例えば「日米地位協定」のこと。アメリカ軍基地がいかに治外法権であるか、アメリカ軍人の犯罪を日本が裁けないのはなぜなのか。これは石破新総理が総裁選前に、「地位協定」を改善すると公約したにも関わらず、昨日の所信表明演説ではそれに一切の言及がなかったことが、「異様」だと話題になっているので、ご存じの方が多いだろう。

主人公は男二人と女一人。それをとりまく力強い仲間たち。男の一人は日本人のCIA局員で、もう一人はやくざの組長の息子。二人が別々の局面から、CIAによる日本搾取に対抗し、保守政権の腐敗を打ち破り、テロを起こしていく。主人公を導き、助ける巫女的な役目の女性も魅力的である。

現実の政治家や右翼をすぐに思い起こさせる人物も多い。岸や安部や小佐野や笹川などなど、「世襲の暗愚な首相たち」と、なかなか厳しいw

557ページ、2500円の分厚い大作だが、まあ楽しく読める。そして、日米関係について、たとえばアメリカの核の傘に守られているなんていう神話は、まったくあてにならないとか、いろいろ裏の話がわかってきて、石破が地位協定に触れなくなったのもこれかなと思ったりする。冒険ものが好きならぜひ一読を。

 

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