「食堂生まれ、外食育ち」新保信長 (著), おくやまゆか (イラスト) KKベストセラーズ

図書館の新刊コーナーは一番最初にチェックして、さらっと立ち読みする。この本「食堂生まれ、外食育ち 」を書いた新保信長さんと, 可愛いイラストを描いたおくやまゆかさんはどちらも知らない人だったが、ちょっと気を引くタイトル、そしてイラストだったので、借りてみた。
奥山さんは雑誌の編集者で、マンガやカルチャー系のものについて、エッセイや評論を書いている人のようだ。1964年生まれだから今60歳か、大阪の実家が町の食堂で、晩御飯は店の食材を使ったものが多かった話。かつ丼ラーメンうどんそば、カレー、定食、一品料理に寿司まであって、繁盛していたみたい。
といっても、「おいしんぼ」みたいな肥えた舌になったわけでもなく、普通のものを普通に食べる生活だった。大学以降はおもに外食で、あちこちの店に。やがて少し稼げるようになって、また雑誌社の経費でおとせる範囲で、接待もかねての食事や飲み会なども。そんな彼の経験から、様々な外食のお店、もっぱら定食屋や居酒屋、小料理屋が多いのだが、その印象と楽しいエピソードをあれこれ披露してくれる。「おいしんぼ」系ではなく、どちらかと言えば「孤独のグルメ」系だが、食堂ガイド本ではない。うんちくは語らない、むしろ食堂と食堂で働く人のささやかなお話という雰囲気。

全部で48章、ひとつずつが6ページの分量で、これは雑誌の連載をまとめた本だから、一話完結の読みやすい分量になっている。
世代的には、自分より10歳ほど若いかたなので、でてくる話がほぼ全部わかる。「めぞん一刻」のプロポーズ場面の味噌汁の話とか、「恵方巻」の出自とか、「シェフのきまぐれサラダ」のきまぐれって、どこからきたのか(老舗のカプリチョーザがきまぐれという意味らしい)とか、何より、この方は阪神ファンなので往年の阪神の名選手の話も少し。そして前々回の阪神優勝シーンとか。
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ところで、なぜか印象残っている話が一つ。それは定食のお皿の並べ方のこと。ごはんは左、みそ汁は右。メインのお皿は真ん中がマナーのようだが、これは関東流とか。関西では、ご飯は左で、みそ汁はその上、つまり左上なのだとか。左手で持って、右を箸を使って食べるからそのほうが合理的かも。でも食卓マナー上右のおかれるので、自分はそれに文句は言わず、自分が食べるときに、左上に味噌汁を置きなおすのだとか。
どうなんでしょう。筆者に気持ちもよくわかるけど、まあ自分はそのまま味噌汁右で食べちゃうけどね。
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誰にも思い当たるちょっと楽しいお話が山盛りで、短いエッセイを編んだものなので、どこから読んでよい。食堂ガイド本では全くない。外食の楽しみという趣の本かな。楽しめた。

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