「オリーブ・キタリッジの生活」でピューリッツア賞をとっているストラウトの新作。
2023年12月15日初版で、図書館の新刊本書棚にあったので、多分自分が一番最初に借りたかもしれない。
ストラウトはオリーブ・キタリッジを主人公にしたものと、こちらのルーシー・バートンが主人公のものと、二種類のストーリーをシリーズ化してだしている作家。どちらも中年から老年を迎えたあたりのアメリカ人女性を描いて、ごく平凡なアメリカ文化と結婚と家族と男女の愛情をメインテーマにしている。
今作は、作家のルーシーと、元夫で大学教授ウィリアムが、別れた後も淡い交流を重ねており、それぞれが再婚したり、また子供をもったりしながら、不思議に心のつながりを保っている微妙な関係が描かれている。
ストーリーは、ウィリアムに実は父親の違う姉がいることを知り、その人に会いに行く旅にルーシーも同行するあたりから、二人の親たちの生き方と二人の育ちが明らかになってきて、それがちょうどアメリカの戦後史と重なってくる。といっても派手な表舞台ではなく、個人史、民衆史としてのアメリカの生い立ちのようなもの。ストラウトの作品に響いている淡々とした人々の生き方へのまなざしのようなものがここにも感じられ、彼女が書きたいものの一つがこれなんだろうなと思う。
もう一つのテーマは、古い戦友のような夫ウィリアムへの愛情。ああ、ウィリアム、あなたってほんと…「ダメな人ね」「根はいいやつなんだね」「どうしようもないわね」「もっとちゃんとしなさいよ」「少し優しい言葉いえないの」「もうちょっと一緒にいたかった」などなど、こんな「つぶやき」がずっと聞こえてくるような、ストラウト的世界だと思う。
面白いかといえば、まあ飽きずに読み通せる。上手い作家だと思うが、あまり男性向きではないというのが一つ。もう一つ、何か映画的な雰囲気があって、例えば名作の「君に読む物語」とか「マジソン郡の橋」とか、ちょっと思い出す。それらのようにベタなラブストーリーじゃないのだが、それはストラウトの上手さで、でも根っこはやはりロマンチックな男女の話を現代的衣裳でお洒落にした感じです。
それにしても、と思う。ウィリアムは3回結婚し、その間何度も浮気なんぞしてたようで、一方ルーシーも2回結婚、数回の浮気もあったとの記述。これがアメリカ中流の現実なんだろうか、それとも今の日本でもありうること?決して「肉食系」なわけでなく、坦々と不倫し、ときに実の子を捨てていくなどと、そしてその子どもとも何とかうまくやっているとか。
まあまあ面白く読めた。
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