ZINE ジンという言葉を初めて知った。マガジンのジンなのだが、普通は出版ベースに乗らない、小さな個人雑誌で、仲間内や小さなサークル内、コミケのようなスペースで、大体は無料で配られたり時にごく安く売られたりする小雑誌のこと。本の体裁はとらず、パンフレットとか時には壁新聞やビラ一枚の形になることもあるとか。
野中さんは翻訳の仕事をしながら、こうしたジンを集めたオンラインショップを運営している人のようだ。この本では、野中さんが自主製作のジンにどうして関心を持ち、またそれをオンラインで紹介しようと思ったのか、野中さん自身の半生(といっても普通の女性なのだが)を語りながら、ほかの様々なジンの製作者も紹介していくという中身である。
初めからマスメディアは拒否する、というよりも関心がない、でも自分の考え、感覚、思いなどは、紙の上に文字で起こして、「もしよかったら、読んでみて」というスタンスで発せられる言葉。普通の「創作者」はおそらく読者を想定し、読者を意識しながらものを書くのだろうが、ジンをやる人は、だれかわかってくれたらいいなという、ある種控えめな雰囲気でそっと世の中につぶやいている、という印象。読み手も肩ひじ張らず、ちょっと手に取って、なるほどね、そうだよね、あーあたしもそう思ってたという感想をもったりするのか。自分でも書けそうだなと思って、すこしずつ広がっていく。でもそれは大きなうねりにはならず、ほんの少しの読者をもった小雑誌がたくさんある、そんな世界なんだろうか。
後半に6人のジン製作者を紹介されている。内田翼さんのものが、イラストを含めてちょっと手に取ってみたい感じです。
本というのは、もちろん中身が一番大事なんだけど、じゃあ「中身のある人間」「表現がうまい人間」だけが世に発信すべき、というものでもない。ジンをやっている人たちの、等身大の日常のつぶやきも、時に心地よいものかもしれない。誰もが売るのが目的でもないし、広く意見を言いたいわけでもないしね。
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