いまどきここまでストレートに言うのは、日本だとちょっと度胸が必要かもしれない。現代の高度資本主義、強欲資本主義、グローバル資本主義によって、もちろん男女ともに苦しめられているのだが、女性のほうに余計なしわ寄せがきて、女性のほうがよけい苦しむことになっていると筆者は指摘している。例えば、出産で、家事で、育児で、賃金差別で、あらゆる場面で、女性が割を食う現象があるが、それはそのまま女性の無償労働が資本主義のこやしになっているということなのだろう。
資本主義とは本来、人間を阻害するものだ。人を物扱いにして、可能な限り搾取する。だが、20世紀において、マルクスやレーニンに指導された国々、ソ連や東欧諸国がまずは(その後どうなったかは別として)社会主義を打ち立て女性や弱者の立場を守り、平等の観点から労働者中心の社会を作ろうとしていた時期があた。資本主義は、人々が資本主義の欠点に気づくのを恐れて、社会主義国家を真似てしぶしぶ社会のセーフティネットを用意していただけだった。
ソ連や東欧諸国が経済的に行き詰まり、結局、ベルリンの壁が崩壊したあと、資本主義は遠慮なく「社会主義」をゴミ扱いにし、労働者の待遇改善や、弱者救済の社会保障制度を捨て去り始める。(公共サービスはだんだん劣化している現状を見ればわかる。年金でも健保でも掛け金がひたすらあがり、サービスは劣化している事態だ)
口当たりの良い「規制緩和」のスローガンに騙されてばかり。それは資本が自らを太らせる方便なのである。富の再分配などは、顧みもされなくなって、貧富の差が決定的に拡大している。日本は今が一番ひどい状態ではないだろうか。
本書では、東欧に留学し長く研究生活をしてきた筆者が、東欧の社会主義のメリットデメリットをきちんと評価しながら、なおかつ、際限ない貪欲な高度資本主義の中で、特に女性が搾取され続けている現状を歎き、「民主社会主義」の理想を現代に打ち立てようとしている。
最終章で筆者は言う。われわれがもしフェイスブックをやめ、アマゾンでものを買うのをやめたら、世界の10億の人がそれをやめたら、あっというまにこの悪名高い巨大企業はつぶれるだろう。もしみんなが明日大銀行に行って預金をひきだしたら、どんな銀行もつぶれるだろう。圧倒的に見える資本主義の権化でさえ、我々の小さな力の結集でどのようにもなる。
だから、それを恐れるからこそ、資本の側は「連帯」「協力」「利他精神」といったものを、まるで古い価値観のように笑いのめすのである。資本主義は利己心と個人主義の上に栄えるものだからだ。
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ちょっと過激なタイトルは、やや意訳で、オリジナルなタイトルは
Why women have better sex under soiaism: and other arguments for economic independence
「なぜ女性は社会主義のもとでよりよい性生活を保てるのか、並びに経済的自立に関する他の論考」
である。
セックスについては端的に、「男女が経済的に対等な関係になれば、いやいやの性生活を送る必要もなくなる。」「女性は妊娠にしても出産にしても、一人でその負担を追わなくてもよくなる。」という話。
すごくいい本で、男の自分でもあっという間に読めた。
今の時代「左翼的」なものを軽んじる言動があるし、それをからかう風潮がネットの世界などでもかなり見られる。そのようにネットでも世論でも誘導する動きがあって、もう暴力的なまでに「大衆」が価値観そのものに影響を受けているのではないか。
筆者はまだ若い方で、このようにストレートに話を進めていく姿勢にとても共感を覚えた。日本でこんなことを言ったら、表から裏から「叩かれる」んだろうな。日本のそういうところは、私は大嫌い!と一度だけ書いておこう。
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