図書館の新聞書評コーナーで、目に付いた本。古い本なので、イーユン・リーの他の作品が取り上げられたせいで関連本として集められたのか。 2005年に書かれ、2007年に日本で翻訳が出た。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
イーユン・リーは1972年北京生まれで、卒業後にアメリカにわたり、免疫学を学んだあと、大学の文芸創作コースに進み、2005年に最初の短編集「千年の祈り」がいきなりフランク・オコナー賞やヘミングウェイ賞などを軒並み受賞した女性作家。フランク・オコナー賞はそれまで英米以外では村上春樹しか受賞していなかったので、注目を集めた。彼女は第二言語の英語で小説を書く。ネイティブチャイニーズなのに英語でしか書かない作家である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「千年の祈り」は短編集で、題材は全て現代中国の特に農村部の話。国共戦争から文化大革命、毛沢東の死を経て天安門事件までが全体の背景。ごく市井の普通の人々の生活が描かれているのだけど、その風土も時間もすべてが悠久の中にあるような、実に「中国的」な作品である。なにか特別なことが起こるというわけでもなく、何か想像力を羽ばたかせるイメージがあるというわけでもなく、ストーリーに大きな展開があるというわけでもなく、それでもその淡々とした筆致の中に、人間への深い洞察力と愛情と慈しみが現れていて、素晴らしい才能だとすぐにわかる。どの作品も読みやすく、次々と読んでいくうちに、あっという間に読み終えてしまった。上手い作家だ。
全10篇、どれも面白いが、巻頭の「あまりもの」を読んで、これはただならぬ作家だと思い、三つ目の「不滅」でこの作者の才能を信じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カイエ こんばんは
返信削除今日、ペソアの「ポルトガルの海」と「不安の書」を借りてきました。
まだパラパラしただけですが楽しみです。
イーユン・リーの「千年の祈り」は一昨年1月に借り出して読みましたが、内容忘失です。彼女の「理由のない場所」は読了後のメモがありますが、ウイリアム・トレヴァーに傾倒していることを知りましたが、私もかなりトレヴァーには肩入れしてました。
大江氏の新しい本、岩波新書で「親密な手紙」は先月入手しているのですが、借本をどうしても優先で、手元本はツンドク状態にあります。
「時ありて」もできればもう一度読みたいと考えています。アダム・スミス、、、は返却しました。
スマホでポロンポロンの打込みでけったいな感想です😅 ですがいつも有益な情報を有り難うございます😊
イーユン・リーはしみじみといい作品を書きますね。どれも面白かった。大江の「親密な手紙」は実際書かれたのは2012年頃ですよね。「晩年様式集」を書いていたあたりかな。大江最後の文筆活動の時期かもしれません。私は、これまでの書評で書いてきたように、大江の絶対的ファンではありません。大江は20世紀における世界文学の巨匠のひとりであることは間違いないけど、晩年のものは、まあ年をとって創造力が枯渇してきた時期だからと思いますが、今一つ評価せず。彼をカリスマと扱うことも今一つ理解できない、という立場です。
削除「時ありて」は私も一応二回読みました。なんか納得いかないので。でも二回読んでも、これは傑作じゃないなと思った次第です。カイエさん、もう一度読まなくてもいいじゃないですか。図書館にペソアのその本ととトレヴァーの作品があったら読んでみたいと思います。
今日は図書館で、バルガス・リョサとガルシア・マルケス、三浦しをんを借りてきました。多分読まずに返すことになるかもしれないが、人生の最後にもう一度ちゃんと読まないとという作品ありますよね。マルケスは数冊読んだが、リョサは一冊だけなので、もう少し読みたい感じです。