ファスト動画サイトの制作者が逮捕されるという事件があって、これは宮城県警が捕まえたやつだった。犯人は北海道にいて、振り込み詐欺もそうだけど、日本中どころか世界中から悪事がやってくる感じ。ところで、誰だって、「なんで映画を早回しで観るんだ??それが商売になるってどんだけニーズあるんだべ?」と思ったはず。
この本を読んでみて、ああそういうことかと納得。簡単に言えば:
「早送りをする人たちは作品を鑑賞しているのではなく、コンテンツを消費しているのだ」
ということ。SNS(ツイッター、インスタグラム、ライン...etc )が生活の中で大きな比重を占めているのは、やはり若い世代に圧倒的に多いようで、コロナ下もあって、そうした空間でのコミュニケーションが重要度を増しているようだ。趣味の世界ではあるけれど、誰かが何かを「推し」としたら、やはり即時の反応が必要なようで、とりあえず、ファスト動画などでその全体を、さらっと把握しておく、という感じでしょうか。なんでも知っている風にしておきたいのは、友達とのコミュニケーションだけじゃなくて、就活でも大いに役立つんだとか。勿論短時間での作品鑑賞は難しいので「鑑賞ではなく、コンテンツの消費」と筆者が述べているのは、そういう意味。多くは若者つまりZ世代と呼ばれる人たちで、その特徴のマイナス面をあげると:
・セリフを全部説明してほしい人たち(TV番組がテロップばっかり、マンガはセリフで全部説明しちゃうとか)
・失敗したくないひとたち
・好きなものを貶されたくない人たち
・みんなが押してるものに乗っかって、楽に「快」を得たい人たち
・「心豊かに」ではなく「ストレス解消」をエンタメに求める人たち
ということになる。
さて、本当にこんな風な感覚の人が多数派になったのか。だとしたら、まあろくな時代ではないな。
ところで。そもそもファスト映画、ファスト動画がどれだけ見られているか、そこからこの論は始まるのだが、あるマーケティングリサーチ社のデータによれば、20代~60代男女1100人を対象として、「動画コンテンツの倍速視聴経験」の有無を問うアンケートがあり、全体では34.4%が見ていると答えたとか。内訳は20代男性で54.5%、20代女性で43.6%で、若い人のファスト動画(映画)視聴率が高いという結果になった。筆者自身も青学大で128人のアンケート結果も持っているが、こちらも若者の「倍速」経験が65%、「スキップ視聴」経験が75%になっているという。
うーん、サンプルが少ないね。動画を早送りするというのは、自分のような高齢者だって普通にあることで、それを映画を早送りで観たり、スキップしたりするのは大分違う。映画は文字通りエンタメとして楽しみたいからゆっくり時間がある時にみればいいし、情報をとりたい動画ニュースとか、スポーツでもあるひいきの選手の活躍だけを見たいという場合にはスキップしてもなんの問題はない。
だから、映画早送りや動画スキップをもって、一律に特定世代の傾向を分析するのは、無理なこと。もちろん作者もわかっていて、いろいろ資料はだしてくるが…
実は読んでいて面白かったし、最後までさっさと読み切ってしまった。かなり嘆息しながらではあるが。Z世代(20代まで)の人たちの、「軽めの」ライフスタイルとか生き方のこだわりとか、仕事観とかがよくわかってまあ面白い本だ。
ただし、取材対象は結構かたよりがあるので、全て納得するわけにはいかないし、これをもって世代論を言う気にもなれない。
それでもまあざっくりと言うと。自分だけの世界にこもって人の話を聞かない、正確な批評を知ろうとしない、会話のためだけの知識収集にやっきになる、などなど、そういう人たちも結構多いということで、これでは「メディア・リテラシー」どころか、「洗脳」とか「カルト」とか「ネトウヨ」とか「トランプ一味」とか、そっちの世界がどんどん拡大するんじゃないか、という心配。どうなっていくんだろうか、まあ自分が死ぬまではまだそれほど変わらないでしょうが。
若い世代のことを知りたい人には、結構面白い本だと思う。「推し」というほどではないが。
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