詩人谷川俊太郎は1931年生まれ なので今年92歳。月1回朝日新聞に詩をあげている。5/21のものは、「いのち」というタイトル、
いのち
ある年齢を過ぎると
どこも痛くなくても
身体がぎこちない
けつまずいて転んでから
それが分かり
体は自分が草木と
同じく枯れてゆくと知る
人間として
社会に参加した
忙しない「時間」は
悠久の自然の「時」に
無条件降伏する
落ち葉とともに
大地に帰りたい
変わらぬ夜空のもと
…以下略
忙しなく生きてきた自分も仕事をやめ、社会から少し身を引いて、大きな病いも経験してみれば、悠久の自然に「無条件降伏」し「落ち葉とともに大地に帰りたい」と、そのように自分も思うときもある。
だけど、ちょっと待って。谷川は92歳で自分より20年以上年上、それでようやく枯れてきたっていうこと?谷川のウィキには、一日一食で、セブンイレブンの玄米ご飯パックを毎日食べているという逸話が載っているが本当かどうか。
谷川俊太郎の作品の中でも1971年の「生きる」は息が長く、今でもよく読まれている。3.11で復活した詩でもある。昨年のTV番組のインタビューはこちら:
https://www.youtube.com/watch?v=Y9eibMKTqvo
詩の全文はこちら:
生きる
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみをすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
単純で分かりやすくて、力強く、美しい詩である。広く読まれているのがわかる、学校で、子どもたちが朗読を聞いて涙を流していたという話。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
谷川の最初の詩集は「二十億光年の孤独」で、1952年上梓。
二十億光年の孤独 谷川俊太郎
人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
よく教科書に載っている短い詩、「かなしみ」はその中の作品で、初めて読んだとき、「ああ、なんていう詩だ・・・」と思った。自分も同じくらい若かった頃ですが。
コメント
コメントを投稿