映画「ベルファスト」 映画「メタモルフォーゼの縁側」

2022年のアカデミー賞で、「CODAあいのうた」と競った作品の一つがこれ「ベルファスト」作品賞は「CODA]になったが、「ベルファスト」は脚本賞を得た。


監督のケネス・ブラナーは「恋におちたシェイクスピア」の監督。ブラナーは、1960年代後半、子供時代を北アイルランドで過ごしている。当時はIRAが過激な活動を繰り広げていた時期。カトリックとプロテスタントの激しい敵意と暴力の中で、それまで平和だった家族の周りに次々と事件が起こっていく。家族を避難させたい父親と、ベルファストに生まれ育ち、ここを離れがたい母親。優しくユーモアにあふれる祖父母などの様子を、主人公のバディ少年の視線を通して活写していく。





ブラナー監督はこの映画をモノクロで作った。ベルファストは高緯度で北の町という印象があり、作品の雰囲気にもモノクロの映像はピッタリ合っている感じがする。
描かれているのは「家族の愛情」。俳優たちがみんな抑えた演技で、実に等身大の人間を演じている。困難で暗い時代でも、こどもたちは明るく、こどもたちは希望である。こういう雰囲気の映画、たとえば「ライフイズビューティフル」とか「ニューシネマパラダイス」とか、ヨーロッパで時々生まれる傑作群の一つになるだろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

映画「メタモルフォーゼの縁側」

芦田愛菜と宮本信子のW主演。少女漫画が原作のようだけど、そっちは読んでいない。漫画も映画も好きな方から勧められて視聴。いい映画だった。




17歳の少女と75歳の老女が本屋さんで偶然知り合いになる。老女は店員の少女に少女漫画をいろいろと紹介され(その多くはボーイズラブを扱ったもの)、やがてお互いに感想をいいあったり、老女の家を訪問したりするようになる。年の差のある女の友情。むろん「孫とおばあちゃん」の関係でもあるが、他人同士という、「距離感」もあってほんわかとした友情関係が展開する。
少女はやがてコミケに漫画を出店し、おそらくは漫画家をめざすのだろうし、おばあちゃんは娘の住むヨーロッパへの旅立つ。いったんは別れの場面となってストーリーは終わる。特に何事もなく、坦々とした展開である。
これは「漫画家がかいた漫画家の世界」でメタ少女漫画とでもいうべきジャンルでしょう。だから、その傾向のある人、少女漫画ふぁん、コミケファンの人にはなかなか興味深く、「あるある」系のエピソードや心情をみてとれるのではないだろうか。

私は少女漫画ファンではないけど、まずまず面白かった。芦田愛菜は、こういうちょっとキョドった雰囲気のオタク少女を演じると結構うまい。宮本はさすがに年の功もあるけど、「かわいいおばあちゃん」役を、なりきって演じている感じ。
たのしく、ほわほわとした作品は、ああやっぱりこれは少女コミックの世界そのものなのでは、と思った次第。

コメント