「シン・日本共産党宣言」「装丁百花」「死海文書」

「シン・日本共産党宣言」松竹伸幸(文春文庫)
内田樹さんのブログ記事を読んでいて、この本のことが気になっていた。
たまたま図書館に新刊本として陳列されていたので、さっそく借りだして読んでみる。
著者の松竹さんは、共産党党員として、多くの仲間に読んでほしいのだろうけど、党の執行部がこれを「異端本」扱いにしてしまったので、どうなるか。

メインの議論は、現在の日本共産党は、党首選びが実質上できないシステムになっているので、党首公選制をとってほしいという提案。もう一つ、対米および防衛問題について現実的な路線をとってほしいという提案のようだ。

いずれも一般的には妥当な意見であり、本来共産党のこれまでの考え方(綱領)とは違っても、それも検討してみよう、という扱いになると思ったら…メディアでご存じのとおりの展開に。志位委員長自らが、松竹伸幸さんに対し、分派行動、党への攻撃と断じて、松竹さんを除名するという流れになった。

本書には日本共産党の歴史も詳述されており、戦中戦後の一時期に「組織防衛」を本気で行わなければならなかった時代もあって、今のような一枚岩の体制を作ってきたこともよくわかる。だから内部からの批判に対して警戒するということもあるだろう。ただ、もうそんな時代でもない。むしろ党員以外での支持を拡大していく意味でも、外部に見える形で、党の合意形成が行われることが大事だとする松竹さんの意見のほうが、多分外部からは説得力あり。
一般人(自分)は日本共産党にはあまり関心がないので(「共産主義」と「資本主義」の現代的在り方については大変関心あり)、その議論についても意見を述べる立場にもないし知識もない。ただし、共産党の対応はあまり「成熟した」対応ではなかったということを強く感じた。「党首公選」はそんなにハードルが高いのか。そしてたった一人の党員の意見を、「除名」という形で排除する面目はどこにも立たないと、思えるのだが、どうだろうか。

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「装丁百花」菊地信義(講談社学芸文庫)
講談社の文芸文庫は、独特な装丁で知られているが、これを担当したのがブックデザイナーの菊地信義さん。その数1300点とか。文芸書以外も含めると15000点の装丁をなさった方のようだ。



デザインのコンセプトを文字の「斜体」「変形」「図像」「字体」「構成」から読み直していく仕事。菊地さんの文章ではなく、水戸部功さんがこれらの「作品群」を分析された。懐かしい本ばかり。確かに講談社学芸文庫の表紙は見事に統一されて、洗練されて、知的な印象だったけど、そうだったのか、といまさらながら、思い至った次第。寝ながら眺められる楽しい本。
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死海文書


ナショナルジオグラフィック社のムック本。「死海文書」とは1946年に発見された、ユダヤ教の経典の写しで、ヨルダン、イスラエル国境にある死海のほとりの洞窟でみつかったもの。イエスの誕生前後にローマ帝国の迫害を恐れてここに秘匿されたと言われる。ベドウィンの羊飼いの少年3人が最初の発見者だが、以後数多くの古書が周辺の洞窟で見つかっており、21世紀でも、新しい発見があるとか(偽書も多い)。
今回はナショナルジオグラフィック社が沢山の写真や図版、地図などと一緒に、ユダヤ教と古代キリスト教の歴史も含めて、この発見の経緯とその後の出来事をわかりやすく解説している。旧約聖書の世界とイエスの生涯、原始キリスト教団のことなど、改めて学ぶことが多かった。


自分が初めてこの死海文書のことを知ったのは、大学時代で英文学の背景として「キリスト教史」の講座をとっていたから。2000年前にすでに経典がこのように筆写されて連綿と受け伝えられていたことに驚いた。そしてそれが、20世紀に一部完全な形で復元されたことも奇跡と言えた。個人的には旧約より新約聖書のほうに心惹かれたのだが、長いユダヤ教の歴史があってこそのキリスト教、どちらがいいかなどという話ではない。

宗教にそれほど興味がなくても、毎ページに掲載されている写真や図版や地図を見ると、当時のことがしのばれて、なかなか楽しい。ちょうど映画「ベンハー」の時代のこと。あの映画の場面を思い出しながら、この本を眺めるとすっとはいってくる。


コメント

  1. おはようございます。もうおそようですが、いま散歩から戻りましたので、気分的には朝の続きでいます。ベンハー、懐かしいです。私もいくつかのシーン目に浮かびました。死海文書も気になります。図書館から借りられるか、次回(2週間後ですが)申し込んでみます。
    歌壇、俳壇ですが、私もささっと見ています。で、何の気の迷いかお笑いですが、今頃本買いました。「教養としての俳句」-帯に俳句は日本のリベラルアーツだ、と。青木亮人―NHK出版、まだ読んでいません。時々真似事してみますが、すぐに投げ出しての繰り返し、自分であきれています。いつも情報をありがとうございます<(_ _)>

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  2. 今丁度、老童雑記ー森村稔著読んでましたら、菊地信義氏を悼む頁にきました。4月で一周忌ですね。15000点凄い❢ 久々にサラダ記念日想い起こしました。

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    1. こんばんは。朝の散歩は毎日ですか。私もできるだけ7000歩位歩くようにしていますが、そのあたりから疲れてくるんですよね。山だと15キロ位は平気なのに。平地は4キロ越えるとダルダルダルビッシュです。
      いわきや南相馬で物騒な事件が頻発してますね。くれぐれもご注意ください。私も何か武器を用意しなくちゃと思っていました。カイエさんは息子さん夫婦とお孫さんと一緒にいられるんですよね。だったら安心ですが。
      歌壇俳壇について毎週気に入ったのをと思っていたんですが…三日坊主💦明日にでも、日曜版をひっぱりだします。カイエさんも勉強熱心で、そういうところは本当にすごいと思います。続けるのは誰にでも難しく、たいていは仲間と一緒に詠むか、投稿するのがいいんでしょうね。私は実作はなかなか…
      最近はレンタルで映画をよく見ますが、「メタモルフォーゼの縁側」という昨年の映画、カイエさんにぜひおすすめします。少女と老女(失礼!の友情のお話。芦田愛菜と宮本信子という「天才」たちの映画なので、安心して見られます。テーマは、少女漫画と友情とボーイズラブですw宮本信子(伊丹十三の奥様)が75歳のおばあさんの役で、これみながらカイエさんのこと思い出したりしました。
      まったく派手なところはないですし、事件らしい事件はおこりませんので安心してみてください。明日にでも映画評を書きたいと思います。



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  3. メタモルフォーゼの縁側、全5巻読了しました。オヨメさんが漫画に詳しい人なので訊いてみたら持っていました❣
    実は彼女は創る側の人でもあり、今は育児休筆中です。私はBL読んだ事ないですが、市野井雪さんとうららさんの関係は奇跡的で素晴らしいですね❦PCでCDは観られますが、私のTVはテープの再生機能がないので観られません。TVで放送されたら是非鑑賞したいと思っています。しかし先生は守備範囲随分と広大ですね👵

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  4. いつもながら名前失念で失礼しました カイエ

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    1. カイエさん、お名前は大体わかいますから、書き忘れてもそのままで大丈夫w
      オヨメ様が漫画だったとは!びっくりです。どんな絵を描かれるのか、一度読んでみたいものです。
      「メタモルフォーゼ」は「メタ漫画」でもあるので、関係者(漫画家と漫画家志望者と漫画オタク)には、とっても面白く、また身に覚えのあるような作品なんでしょうね。コミケであった作中作の漫画家は、映画では古川琴音が演じています。いま「どうする家康」にでてますが、ちょっと前にNHKの単発ドラマ「アイドル」で戦前のアイドル明日待子を演じていました。この方も個性的でいい役者さん。そういえばこの映画には男がでてこない、一人だけ幼馴染がいるんだが、映画ではあまり大した役割はなかった。コミックではどういう扱いかわかりませんが、そこは2時間ドラマに収まるよういろいろカットされているんだろうか。漫画のほうも機会があれば読んでみます。古川のゲオで借りてみようかなと思いました。
      いまはパソコンの画面で映画を見ることもあります。全画面表示にすればまあ見られますよ。好きな時に停められますし。そのまま、コードでTVとつなげば、DVDやブルーレイのドライブがテレビについてなくても、TVのモニターで鑑賞もできます。

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