映画「ドライブ・マイ・カー」 ×  BRUTUS 村上春樹特別号

ようやく見た映画。3時間の長丁場でした。


この映画は村上春樹の短編集「女のいない男たち」の中の「ドライブ・マイ・カー」を原作としている。「ドライブ・マイ・カー」という短編小説から基本設定を借りて、そこに同短編集の「シエラザード」と「木野」のエピソードを盛り込んんだもの。それに映画監督の濱口竜介の独自の味付けがたっぷり。

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評価としてはプラスマイナスあり。
マイナス面では、
①濱口のオリジナル脚本部分であるチェーホフの劇中劇が、あまりに「せりふ回し」的部分が多くて、映画のダイナミズムにそぐわないという印象が強い。飽きるし、ちょっと「古い」という気持ち。
②シエラザードのエピソードは少女時代の悪夢のような経験の話だが、話が重すぎで、これはドライバーのみさきの母の死についても言える。小説ではアルコールで事故死だったと思うが、こちらは結構ヘビーな話に。映画を2時間にして、もう少し絞ってもよかったのでは。

プラス面では:
①上の画像にあるような映画的ショットのセンスがとても好き。美しい場面が多い。
②少しだけだが北海道まで向かうロードムービー的なところ、延々と高速道路を走る場面など、「車」がとってもいい役目をはたしている。車とか運転とか、ただの機能的なものだと思う人には、わからない。

テーマは人の心の闇の話なので、これは村上春樹(的なもの)が好きかどうかで、映画の印象もかなり変わるのではと思う。ただ村上の村上たる所以ともいえるのは、「異界的な闇」で、これは傑作「木野」にも描かれているものだが、映像的処理は難しいのだろうなと思う。
主なキャストは西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいか。いずれもいい味だしてるが、岡田がなかなか。三浦は朝ドラで初めて見た人だったが、はまり役な感じ。
お勧めかどうか…いろいろ賞をとった作品なので、映画好きは見るべき。そのうえで、好き嫌いはあるとだけ書いておく。

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本屋さんで立ち読みしていたら、たまたま見つけたブルータスの特別号。これってもしかしてノーベル賞がらみと思ったら、かなりの分量のインタビューが掲載されていて、ちょっと読んで、すぐに購入決定。1760円もする本で、図書館にはまず入らないと思われるので、涙を呑んで出費(けちくさい)。

村上春樹が好きなら、これは買いですね。オリジナルインタビューが長くて、読み応えあり。その他、村上の好きな本、音楽、映画、絵画など、様々なコレクションが写真付きで載っており、早稲田にできた村上春樹ライブラリーの様子もよくわかる。


小説家としては、これから過去の作品を越えるものはなかなか書けないだろうと思うが、やはり同時代の作家として若いころからずっと読んできた人なので、思い入れもあり。
内田樹が最近のブログで村上春樹について次のように書いている。
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村上文学では「この世ならざるもの」、人知を以ては計りがたいものが私たちの世界に繰り返し侵入してくる。そして、愛する人を拉致し去り、人を取返しのつかない仕方で傷をつける。でも、これは有史以来世界中の人びとが経験してきたことの実感なのだと思う。
(村上文学の意義について:http://blog.tatsuru.com/2022/10/19_1457.html
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かなり分厚い本で、ブックガイド、音楽CDガイドにもなっているので、読み切るのにしばらくかかる感じ。

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