小川洋子、白洲次郎、斎藤清

小川洋子は時々読む。いつも思うのは、なんて静かな世界なんだろうということ。
人質に朗読会は、面白い仕掛けになっている。中東かアフリカのツアーにでかけた日本人7人がテロ組織の人質になり、交渉が始まる。少しも進捗せず、やがて特殊部隊の突撃によって爆破、犯人グループも人質たちもも全滅という事態に。
ところが、この事件後しばらくして、人質たちの日常を政府側が盗聴したテープがでてくる。なんと人質たちは、何もすることがない人質生活を埋めるために、一人ずつ物語をしていく。それが七つのストーリーとなり、さらに政府側の盗聴部隊の若者が、それを最後まで聞き、自分も自分の物語を語る。
どのストーリーも、穏やかで不思議な世界。小川らしい世界が次々と現れるのだけど、派手にドラマタイズされることもなく、静かにその世界が消えていくというのは、いかにも小川洋子的。
まず、語り手がその時点で全員(最後の政府側の一人を除けば)死んでいるという設定がなんともいえない。上手い人だなあと思う。

「言葉の標本」は、小川洋子の作品2010年までを、作中のセリフとか描写をとりだしながら、紹介していくもの。小川洋子が図書館館長になったような設定で、本への愛情を語っている。小川ファンでいくつか作品を読んでいると、見取り図的に全体像がわかった面白い。

こちらは白洲次郎を「写真家」として取り上げている本。1930年代の日本と、彼が海外にいたときの写真を愛機ライカで撮ったもの。白洲次郎とか小林秀雄とか、戦中戦後の日本で活躍した知的な巨人たちのことは、もう忘れ去られていくのだろうな。
表紙の眠っている女性は白洲正子さん。海外旅行に同行された折のものか。白洲正子、この人もまた素晴らしい文章を書く女性であった。戦中戦後史の資料の一つとしても読める。



会津にいった折に尋ねた、会津柳津の斎藤清美術館。大好きな版画作家なので、何年に一回かは訪問する。美術館自体も新しく、光がとても美しい作り。小さな個人美術館なので、閲覧するのに時間はあまりかからず。休日は入れたて珈琲を、日のさすロビーで只見川を見ながらいただける。

いつも何枚かかって、小さな額に入れたり、絵の好きな友達にはがきとして送ったりする。


コメント

  1. そういえば小川さんを暫く読んでなかったです。先日移動図書館にいくと、なんと目の前にドウゾというふうにおいてありました。猫を抱いて象と泳ぐ!10年以上前の発行でした。今日夢中になって読了しました。ラストが悲劇だったのが残念といえばそうですが、大変実力のある作家さんですね。カイエ

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  2. 小川さんは、本当に「本」が好きな方ですね。私は小川さんを読んで、内田百閒の面白さを再認識しました。この人は「いい本を選ぶ編集者」の眼ももっているかたですね。「猫を抱いて象と泳ぐ」未読でした。見つけたら借りだししたいと思います。カイエさんは、「ミーナの行進」は読まれましたか。これが振り返ってみると一番面白かったかも。

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  3. ミーナの行進、未読です。次読んで見ます。楽しみです。カイエ

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    1. ミーナはカバです。変なお話ですが、私も姉もこの話が大好きです。あと「博士の愛した数式」はベストセラーでしたので読まれたと思いますが、これの映画が、若き日の深津絵里と寺尾聡主演でした。私はあとでビデオで見たんですが、とても面白かった。小川洋子が二年前にブッカー賞候補になったのは、「密やかな結晶」ですが、こちらは、まあ小川らしい静かな静かな作品でした。多和田葉子の「献灯使」となんだかちょっと似ているんです。世界文学というものがあるかどうかは不明ですが、世界的な賞をもらう(可能性のある)作品は、ややSF的要素がある、というのが私の直観。カズオイシグロもそうですよね。とりあえず、ニーナの行進、お楽しみくださいね。
      私は最近読書より「数独」で時間つぶししてますw

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