黄色いのは「僕はイエローでホワイトでちょっとブルー」
2019年の本屋大賞ノンフィクション部門の大賞をとった。キャッチーな装丁もあるだろうが、本当に面白い本で、たぶんかなり売れたのでは。
イギリスに単独渡ったパンク少女が、向こうで労働者階級の男性と知り合い結婚し、男の子を育てる。その子の学校生活をめぐる様々な出来事、人種差別、階級差別、それでも仲間を作り成長する男の子と、お母さんの成長と。とても大人な発言はなかなかクールだし、お母さんの熱い怒りも今時とても素敵だ。
ブレイディみかこさんは、一介の保母さんなのだが、その労働運動や女性運動、
人権運動に対するスタンスはとても普通の人と思えないほど。
ちくま新書「労働者階級の反乱」はブレグジット(EU離脱)に至る階級と貧富の格差の歴史と労働者の投票行動について詳述されており、あまり目にすることのない類の本。特にイギリス労働党の歴史を知る上では、コンパクトでわかりやすい評論だった。
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*ブレグジットは保守回帰や移民排斥で語るべきではない。これは労働者階級による支配階級、保守層への痛烈なカウンターパンチなのだ、ということがわかった。労働者階級はサッチャー以降の「緊縮政策」に大反対で、「緊縮」がもたらしたものは社会保障制度の衰退だけということを身に染みて感じているのである。反緊縮の精神がブレグジットの国民投票に強く影響していたのだという。
日本の報道ではそうではないみたいだけどね…
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「This is Japan」はブレイディが日本に里帰りした折に、日本の底辺労働者やそれを守るNPOの人たちとのかかわりを描いたルポ。今の日本に、このように正当に怒りを顕せる人はどれだけいるのかと思うほど。すごいパワーだなと思う。
みかこさんは若いころ日本でキャバクラなどでアルバイトしてお金をためてはイギリスに戻るというような、破天荒な暮らしをしていたのだが、そのキャバクラ生活(水商売生活)でさえも、もう昔のようなおおらかさはなくなって、とことん格差の中に落とし込められ、搾取されまくり、もう一攫千金などありえないという今の日本の状態にため息をつく。
世の中はすでに「貧困と格差」なのである。専門の保育園訪問を通して、反緊縮運動として反貧困運動としての可能性を探る。
ブレイディさんは、書く本の面白さ以上に、生き方の面白さにひかれる、
そんなタイプの人だ。この人こそ日本にいてグラスルーツの運動を指導してほしいような、そんな人だ。
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印象的な場面を一つ。反原発のステッカーを貼った老女二人に、電車の中の若者が「くそサヨク」とののしる。イギリスでは「ファッキング・レフト」というそうな。愚かなり。
イギリス労働党のジェレミー・コービンやアメリカの民主党左派バーニーサンダースなど、若者の支持が増えていることを、日本の若者はどう考えているのだろうか。
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