「ミライの源氏物語」山崎ナオコーラ(淡交社)


 NHKの「どうする家康」がやっと終わって、少し楽しみにしていた「光の君へ」が始まった。題材的には愛憎物語と権謀術数のやや地味な話になりそうだが、とりあえず視聴2回。人物を覚えるのが大変だが、ネットの相関図などを眺めながら、吉高由里子のだみ声を楽しんでいる。

この本と瀬戸内寂聴の「源氏物語」を合わせて借りてきて、家人が瀬戸内を、自分がこちらを最初に読みだした。

山崎の本は、源氏ものがたりのうちいくつかの巻を現代的なジェンダー視点で分類していくもので、とてもわかりやすい。章立てはこんな感じ。

  ロリコン…紫の上       マザコン…桐壺更衣と藤壺

  トロフィーワイフ…女三宮     性暴力…女三宮

  貧困問題…夕顔       マウンティング…六条御息所と葵の上

なんとなくわかるでしょうか。

各章は一ページほどの原文の引用と山崎による現代語訳、そしてテーマに沿った解説という構成になっている。まあ、源氏物語は延々とそして次々に女性が入れ替わる色恋の話なので、あまりストーリーは関係ない(ちょっと暴言?)。

本文中に、折口信夫が「源氏は『若菜』から読めばいい」と言った話が引用されていて、折口の意図は、山崎が「確かに、ぐぐっとうねる『若菜』の巻は読みごたえがあります。どろどろした人間心理が詰まった中年物語の重みは格別です」と説明してくれる。(ちなみも私もこの言を助けに『若菜 上』から読みだした。)

千年前の小説源氏物語を今の視点で見ると、もちろん犯罪に近ものもたくさんあるのだが、ある意味千年たっても、人は同じような恋愛、性愛というものに支配されているのだなあと思うところあり。ただし山崎さんは自ら性別を云わないノンバイナリーの立場の方。

昔の女性は「恋愛をやめて山に入りたい」と思ったりしたが、今なら恋愛をしない人生を選ぶこともできる時代なのか。「あさきゆめみし」を楽しむ人も、めんどくさいと思う人もいろいろいるんでしょう。


コメント