「日本が滅びる前に 明石モデルがひらく国家の未来」泉房穂(集英社新書)

明石モデルとは次の「所得制限なしの5つの無料化」で有名です。

  ①高3までの子ども医療費の無料化。市外の病院も無料。
  ②第二子以降の保育料の無料化。親の収入関係なし。
  ③おむつ定期便。毎月おむつなど子育て品を家庭に届ける。
  ④中学校の給食費無料。
  ⑤公共施設の無料。科学館、博物館、プールなど。
泉さんはこれを公約に明石市長に当選し、市職員、市議会などの反対を押し切り、市民の支持を背景にして、この政策を推し進め、全国にこれと同じような取り組みを広げていった。岸田首相の「異次元の少子化対策」などと比べ物にならない成果を上げている。全国で2番目の人口増となり、今も多くの子育て世代が移住してきているという。
箱もの行政ではなく、こうした「福祉的政策」でも、現役のwインカム世代を集めれば税収は上がるし、市の財政も豊かになる。無駄を廃し思い切った子育て政策に力をいれることが、将来の日本にも大いに利するという考え方、実に実効性のある施策だと思う。
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泉さんは、結構きつい物言いもあったりするので、「パワハラ」的な批判をうけたこともあったようだが、実際は古い市の体制や事なかれ主義、前例重視主義などを利権絡みの反対派と闘いながら、新しい時代にふさわしい、人間を大事にする政治に代えていった人だ。
漁業者の貧しい家庭で、多忙な両親に代わって障害のある弟の面倒を一人で見ながら、様々な障碍者差別と闘い生きてきたという。それが泉さんが政治を目指した理由だとか。
親の七光りで何の苦労もなく育ってきた人が、親の仕事の跡継ぎで金儲けのために政治家になる例が多くみられるのとは大変な違いだ。
弱者や貧者の気持ちがわかるひとこそ、政治家になるべきだと思う。全てがそうである必要はないけれど、そのような人が政治に参加できる体制を維持すべきである。現在の選挙制度は圧倒的に現役有利、親の七光り有利になっているが、それでもすべての国民に一人一票という平等の投票権がある現在の民主主義を、泉さんは「美しい」という。

 泉さんは12年市長を務め、後進に道を譲り、新たな政治への参加を考えておられるようだ。大いに期待したいところ。

これからの日本がどうあるべきか、社会福祉、子育てなどに興味がある人はぜひ一読してほしい本。

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