お天気が悪いので、ひがな読書。コーヒーは最近控え目にしているが、やはり本を読むときはそばにほしいアイテムの一つです。
「いけない」は2019年の本だけど、先週の新聞書評でとりあげていたのは、文庫化されたからか。紹介を見て、図書館で単行本を借りた。「~してはいけない」というタイトルの四つの章で構成された小説。それぞれが独立しているようで、途中で終わっているようで、それが最後に一気につながってくるタイプ。著者は各章の最後のページに一枚の写真を載せ、それが謎解きの大きな手掛かりになる?という仕組みだが、さてどうなるか。読者への挑戦状形式は、昔からあるミステリーの技法の一つだけど、見抜けるかな…
各章のタイトルは次の通り:
第一章 弓投げの崖を見てはいけない
第二章 その話を聞かせてはいけない
第三章 絵の謎に気づいてはいけない
第四章 町の平和を信じてはいけない
そして本のカバーの裏側に次のようなヒントも載っている
第一章 死んだのは誰?
第二章 なぜ死んだの?
第三章 罪は誰のもの?
第四章 わかった?
さて、結論。
ミステリーには叙述トリックという手法がある。語り手を誰に設定するかとか、本当のことを書いているんだけど、うまく核心を隠しながら書くとか、読者をミスリードしていくタイプのミステリー。「いけない」は叙述トリックとは言えないけれど、読者を迷わせる仕掛けがいくつかあるので、「だまされないぞ」というつもりで読まないと、簡単にひっかかる。そういう点は上手い。
自分もよみ終えて、「え?え?」と思い、四枚の写真を見直し、いくつかの場面を振り返り、ネタバレサイトを少し覗いて、ああやっぱりそうだったんだと思ったり。
小説はまあ楽しめるのだが、いくつか気になった点をあげる。
いくつも起こる殺人事件の動機が弱いのがひっかかる。動機や心理描写を描くタイプのものでないにしても、それで殺しちゃう?
カルト宗教の問題がタイムリーで、笑ってしまうけど、現実の統一教会のほうがはるかに悪辣なので、こっちのカルトは事件性も少ないので殺人いらなかったなあとか。
そして、二人の小学生。まるで別の物語が展開され、これがきっとうまく前の話につながるんだろうなと思ったら、意外とそうでもなかったのが残念。
以上、ミステリーとしては、いまいち不完全な感じがする。叙述トリックや、絵の謎と読者への挑戦などたくさんの仕掛けがあって楽しめるのだが、うまく全部が回収されきっていない印象を受けた。
直木賞作家なので、次は賞をとった作品を読んでみたい。
おはようございます
返信削除川上弘美氏の「水声」「大きな鳥にさらわれないよう」、読了しました。理系の方が、無から有を作物されたようで、その手際と完成度に驚きました。※「水声」を読まれた人は「好き嫌い」が生ずるかもしれませんが、、。「大きな鳥に、、」のディストピアは、ありうるかもしれない未来世界です。その想像力、構成力、力業にノックアウトされました。川上氏は種々の受賞をしていますが、ほんとうにスゴイ作家さんですね。(それにしてはあまり私は読んでなかったのですが、、)※道尾さんのも借りられたら読んで見ます。文芸春秋は私も購入しました。それにしてもad先生の批評力が素晴らしいです。プロの文芸批評家の上をいっていられると思います。
「おばあさん」も読み始めましたが゛、平凡なの序の口で、まだ佳境には入っていません。なにしろ厚いのでゆっくりいきます。このごろ、なかなか良い天気がなくて、読書には向いていますが、長歩きはできないでいます。アケボノソウ、もう咲いたんですね。私も天気の良い日に見に行きます。 cahier
カイエさんは私より年上なのに、読書愛が素晴らしい。そしていろんなジャンルに挑戦されているところが、自分など及びもつかないところです。また私の知らない世界をご紹介くださいね。
削除私も天気がよくないのにかまけて山歩きを休みがちになって、いつのまにか体力がおちてしまっています。でもまあそれは年のせいもありますね。あまりストレスをかけず、楽しめる山歩きをしようと思っています。アケボノソウとサワギキョウが咲いています。アケボノソウは今年は遅かったみたいで、つぼみもたくさんあったので、そろそろ見ごろではないでしょうか。