今年の本屋大賞をとった朝井リョウの「イン・ザ・メガチャーチ」が回ってきたので、読んでみる。面白くて一日で430ページ読んでしまった。朝井リョウは見事に多才な人で、これまで何冊か読んでいるのが、一気読みさせる筆力はさすが。ただし、この人が扱うテーマ、というかサブテーマは、大体変わらず、人の心の深層にある悪意とか孤独とか攻撃性とか、他者を求めつつ拒む心理とか、あまり明るいものではないので、読後感がいまいちのことが多い。会話劇が主体で、会話の中で一人がどんどん追い詰められて破局に向かう感じ、いろんな作品にみられるパターンである。ストーリー性は圧倒的なのだが、爽快感とは正反対のものがあって、なんというか、好みがわかれるのではと思う。
「押し活」をめぐる話である。三人のメインキャラを交代に章の主役にして進めていく形。芸能プロダクションらしき会社で、かつてはスター発掘を手掛け今ではすっかり奥に引っ込んだ中年男性。離婚して、妻と子どもは家をでて、孤独の中にいる。突然かつての同僚が新たな新人発掘プロジェクトを起こし、それに巻き込まれていく。次のキャラはその男性の娘。意識高い系のグループについていけず、大学からの留学の夢も諦めて、かつて見下していたアイドルオタクになっていく。三人目は30代女性、派遣とバイトを繰り返しながら、地下アイドル的な男性を押し続けている。そのアイドルが自殺して、その死因をめぐり陰謀論にはまっていく。
押しにはまる心理をこれでもかというくらい、綿密に描いていくのだが、読み手はまず共感はしないだろうな。でも、理解は可能。アイドルを作りだす運営側の中年男も、この暗い情熱の炎に知らずに焼かれていくというか。その感じが、かつて直木賞をとった「何者」の後半の堕ちていく疾走感をほうふつとさせる。うまい作家だなと、思うと同時に、朝井リョウは変わらないなという思いも。この人は多弁で、頭が切れて、口喧嘩バトルの達人みたいな人なんだよ。
これ、ほんわか感動系が多い「本屋大賞」をとってしまったのが、いまいちピンとこない。その系統とは正反対の小説である。
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