「沖縄を語り継ぐ ある家族の歴史」ジョン・カビラ、川平朝清(岩波新書)2026/6/19初版

ジョン・カビラとカビラ慈英、テレビなどでよく拝見する沖縄出身のキャスター、タレントさんたち。この本は兄のジョンが二人の父親の川平朝清さんをインタビューし、沖縄の戦前戦中、戦後史を家族という視点をとおして、描いたノンフィクションである。ともすれば、悲惨な沖縄戦にのみ関心が注がれるが、ここはあまり語られない沖縄の戦後史がメインだ。
前半は父親のインタビューが中心。後半は、父が自ら書いた自伝風のもの、ジョンが父を語ったもの、ジョンの娘の羽夏か祖父を語ったもの、という構成になっている。ファミリーヒストリーであり、沖縄史であり、とてもよみやすい構成で、何より面白い本だった。川平朝清さんはご健在で98歳、スーパーおじいちゃんで、興味尽きない人物である。
朝清の父は沖縄生まれで、川平一族は琉球王朝とかかわりを持つ人たち。父が台湾へ移住し、四男の朝清は台湾に生まれそだった。終戦時台湾にはたくさんの日本人がいたが、沖縄出身者も4万近くいたとか。戦後沖縄に戻り、英語ができた朝清は米軍関係の仕事をするようになる。そしてラジオの仕事にも参加。上京しNHKでアナウンサー養成所を出て、その後アメリカにわたりミシガン大学に入学、そこで妻となるワンダリー・ウィーバーと出会う。二人は結婚を決意し、二人で沖縄に戻ることに。朝清はメディアの仕事、ワンダリーは教師として、苦労しながら戦後の沖縄を生きた。三人の男の子を育て二人はメディアの仕事につくことになる。

沖縄戦の話もたくさんでてくるが、メインは戦後の米軍統治下の沖縄の様子、そして、本土返還時のこと。沖縄の人の複雑な思いがはっきりと、しかし批判的にではなく淡々に描かれている。朝清は現上皇の昭仁皇太子に沖縄について上奏した経験もあるという。ご挨拶で沖縄県民にも触れてほしいとお願いをしたが、その場ではかなえられなかったものの、その事情とその後の御言葉について、昭仁皇太子から、朝清あてに言葉をもらったことについても、これはなかなか貴重な話なのだが、詳細が書かれてあった。昭和天皇はいざしらず、昭仁上皇の人となりがしのばれるエピソードだった。

とても興味深い人物。何よりポジティブで、クリスチャンらしく誠実で優しい人柄にすっかり魅せられた。読みだして2時間ほどで、一気読み。よい本にめぐりあった。こんな日本人がいたんだな。素晴らしい。

 

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